岐阜県はAI課金全国4位―この関心を地域のAI実装へどうつなげるか

はじめに

2026年4月、フコク生命の生活情報メディア「47Life(よんななライフ)」が、47都道府県別の「AIの年間課金費用ランキング」を発表した。岐阜県は年間平均19,917円で、長野県、熊本県、奈良県に次ぐ全国4位だった。全国平均の12,568円を7,349円上回っている。

この結果を見て、「岐阜県は日本で4番目にAIが進んでいる」と受け止めるのは正確ではない。調査が尋ねたのは、個人がAIに年間いくら課金しているかであり、企業の導入率、行政サービスでの活用、人材の厚み、生産性向上などを総合評価したものではないからだ。

しかし、だからといって、このランキングに意味がないわけでもない。

岐阜県の調査対象者のなかに、AIへ費用を払ってでも使おうとする人が存在し、その平均額が全国上位に表れた。これは少なくとも、県内にAIを試し、価値を感じ、継続して使う層がいる可能性を示す材料になる。

JAICが注目したいのは、「4位という順位が何を証明するか」ではなく、この関心を岐阜県の企業・自治体・地域社会の具体的な成果へどうつなげるかである。

47Life「AIの年間課金費用ランキング」の概要

47Lifeの元記事によると、調査対象は47都道府県の20代から50代の男女100人ずつ、合計4,700人である。質問は「仕事や日常でAIを使うか」「AIに年間いくら課金しているか」で、課金額は個人利用について回答する形式だった。

全国では52%がAIを「使う」と回答した。一方、年間課金額は「課金していない」が65%であり、利用者のすべてが個人で料金を支払っているわけではない。無料版を使う人や、勤務先が契約したサービスを使う人も含まれると考えられる。

年間課金額回答割合
課金していない65%
1,000円未満6%
1,000円以上5,000円未満10%
5,000円以上1万円未満9%
1万円以上5万円未満7%
5万円以上2%
分からない・答えたくない1%

各県100人という同数の回答者を比較したランキングであり、岐阜県についても100人の回答をもとにしている。県全体のAI成熟度を示す調査ではないが、地域別に個人課金の傾向を見る話題性のあるデータとして受け止めることができる。

AI年間課金費用ランキング・47都道府県の全順位

順位都道府県年間平均課金額順位都道府県年間平均課金額
1長野県25,786円25千葉県12,000円
2熊本県25,308円26愛媛県11,700円
3奈良県22,620円27栃木県11,600円
4岐阜県19,917円28群馬県11,550円
5秋田県19,591円29茨城県11,536円
6神奈川県19,056円30宮崎県11,395円
7静岡県17,870円31香川県11,125円
8新潟県17,833円32青森県10,778円
9鳥取県16,550円33鹿児島県9,938円
10福井県15,650円34佐賀県9,571円
11東京都15,638円35岡山県8,737円
12福岡県15,031円36宮城県8,688円
13福島県14,786円37石川県8,591円
14大阪府14,568円38高知県7,923円
15山梨県14,281円39埼玉県7,607円
16島根県13,850円40広島県7,286円
17愛知県13,833円41大分県7,083円
18京都府13,688円42徳島県6,969円
19北海道13,140円43滋賀県6,563円
20岩手県13,083円44山形県6,188円
21三重県12,441円45山口県5,000円
22長崎県12,208円46和歌山県4,906円
23沖縄県12,091円47富山県3,091円
24兵庫県12,040円全国平均12,568円

出典:47Life「AIを多く利用している都道府県はどこ?かける金額は?」

岐阜県4位を「AI先進度4位」とは読まない

岐阜県が4位になった理由は、今回の岐阜県の回答者について算出された個人の年間平均課金額が19,917円だったためである。公表内容から、製造業の集積、県内企業のAI導入率、行政DXの進展などが順位を押し上げたと断定することはできない。

一方で、岐阜県では最も多かった課金額の回答帯が「1,000円未満」、最高額の回答帯が「5万円以上」とされている。県民が一様に約2万円を支払っているのではなく、少額利用者と積極的に課金する利用者が併存している様子がうかがえる。

つまり4位という結果は、「岐阜県のAI活用が全国4位まで完成している」という評価ではない。むしろ、AIに関心を持ち、自分で試している人の力を、これから地域の実装へつなげられる可能性があると読む方が建設的である。

岐阜県にはAI実装を進める土台がすでにある

岐阜県では、AI活用を地域の成果へつなげるための基盤づくりが始まっている。

岐阜県AI活用研究会は、県、市町村、県内中小企業などでAI活用を促進するため、専門家や実務者が意見交換する場として設置されている。岐阜県DX推進コンソーシアムでは、AIに関する講演会、製造業AIカンファレンス、ワーキンググループの成果発表などが行われている。

また、ソフトピアジャパンは県内企業向けの人材育成や伴走支援を担い、テクノプラザものづくり支援センターでも中小企業向け生成AI活用セミナーが開催されている。基礎を学ぶ機会だけでなく、企業が導入や実証へ進むための支援資源が県内に存在する。

重要なのは、ランキングを受けて新しい看板を掲げることではない。すでにある支援機関、研究会、企業、大学、自治体の取り組みをつなぎ、AIに関心を持つ個人が次の一歩へ進みやすくすることである。

JAICが提案する、岐阜県の関心を成果へつなげる取り組み

「AIを学ぶ場」から「自分の業務を変える場」へ

生成AIの基礎や操作方法を学ぶセミナーは、最初の入口として重要である。しかし、知識を得ただけでは、企業や自治体の成果には直結しにくい。

次に必要なのは、参加者が自分の業務を持ち込み、その場でAIの使い方を組み立てる実践型の支援である。例えば、製造業なら作業手順書のたたき台、品質記録の整理、外国人従業員向け資料の多言語化が考えられる。観光業なら問い合わせ対応、館内案内、海外向け情報発信、自治体なら文書の要約、庁内FAQ、会議録の整理などが候補になる。

ただし、AIを使うこと自体を目的にしてはならない。「時間がかかっている」「担当者に知識が集中している」「情報発信が追いつかない」といった現場の課題から出発し、その解決にAIが適しているかを見極めることが重要である。

個人の利用経験を、県内企業が学べる事例にする

今回のランキングが示唆するように、岐阜県内には自分でAIへ課金し、使い込んでいる人がいる可能性がある。その経験は、地域にとって貴重な資源になり得る。

大企業の先進事例だけでなく、県内の中小企業や小規模事業者が「どの業務に使ったか」「導入前と何が変わったか」「どこで失敗したか」「どのように確認したか」を共有できれば、同じ規模や業種の企業が自社へ置き換えて考えやすくなる。

成果だけを美しく紹介するのではなく、適さなかった用途や、人による確認が必要だった場面も含めて公開することが大切である。地域の実例が蓄積すれば、AI活用は一部の詳しい人の話ではなく、県内企業が現実的に検討できる経営手段へ変わっていく。

中小企業が「相談から実装まで」迷わない導線をつくる

AIに関心があっても、「何から始めるか」「どのサービスを選ぶか」「情報を入力してよいか」「費用に見合うか」が分からず、導入に進めない企業は少なくない。

岐阜県には複数の支援機関や相談先があるからこそ、利用者側から見た分かりやすい導線が重要になる。基礎相談、業務課題の整理、小規模な試行、利用ルールの整備、効果確認、本格導入までを、必要に応じて適切な機関や専門家へつなげる仕組みである。

特に中小企業では、専任のAI担当者を置けない場合も多い。相談した企業に対して、ツールの紹介だけで終わらず、最初の一業務を実際に動かすところまで伴走することが、実装率を高める鍵になる。

課金額ではなく、地域にもたらした変化を伝える

AIへの支出は導入の一面にすぎない。地域のAI活用が進んだかどうかは、費用の大きさではなく、現場に生まれた変化で見る必要がある。

例えば、文書作成や問い合わせ対応に要する時間が短くなったか、担当者しか分からなかった知識を共有できたか、外国人従業員や観光客への案内が改善したか、新しい商品やサービスの企画につながったか、といった変化である。

岐阜県から、こうした具体的な成果を伴う事例が継続的に発信されれば、「個人のAI課金額が高い県」という話題を超え、「地域課題にAIを実装できる県」という評価へ近づいていく。

JAICが地域で担える役割

JAICが担うべき役割は、ランキングに新たな評価を加えることではない。AIに興味を持った人と、導入したい企業・自治体、知見を持つ専門家、既存の支援機関をつなぐことである。

具体的には、業種別の実践研修、導入前の業務整理、安全に利用するためのルールづくり、県内事例の言語化と共有、導入後の効果確認などが考えられる。特定のAIサービスを導入することをゴールにせず、現場の課題に対して必要な技術と支援を選ぶ中立的な立場も重要になる。

個人が自分の費用でAIを試す段階は、地域の変化の始まりである。その小さな実践を拾い上げ、企業の業務改善へ、自治体サービスの向上へ、地域産業の新しい価値へつなげる。そこにJAICの役割がある。

まとめ

47Lifeの「AIの年間課金費用ランキング」は、47都道府県の20代から50代の男女100人ずつを対象とした調査である。岐阜県は、個人利用におけるAIの年間平均課金額が19,917円となり、全国4位だった。

この結果は、岐阜県が日本で4番目にAIが進んでいることを示すものではない。一方で、AIに費用を払い、自ら活用しようとする人が県内にいることを示す前向きな材料として捉えることはできる。

岐阜県には、AI活用研究会、DX推進コンソーシアム、ソフトピアジャパン、テクノプラザ、大学、企業、自治体など、AI実装を支える基盤がある。次に必要なのは、個人の関心を孤立させず、実践型の学び、地域事例、伴走支援、成果の発信へつなげることである。

目指すべきは「AI課金額の高い県」ではない。製造業、観光、行政、中小企業など、岐阜県の現場にある課題をAIで一つずつ改善し、その知見を地域全体で共有できる県である。

4位という順位はゴールではなく、岐阜県のAI活用を次の段階へ進めるためのきっかけとして生かすことができる。

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