地方自治体に向けて、ペーパーレス化と庁内情報整理に関する提案を行いました

JAICではこのたび、地方自治体に向けて、ペーパーレス化と庁内情報整理に関する提案を行いました。

ペーパーレスというと、紙の使用量を減らす取り組みとして捉えられがちです。
しかし、自治体業務において本当に重要なのは、紙をなくすことそのものではありません。

庁内にある情報を整理し、必要な人が必要なときに確認できる状態をつくること。
そして、情報を共有し、再利用し、将来的なAI活用にもつなげられる基盤を整えることが重要です。

今回JAICでは、ペーパーレス化を単なる紙の削減ではなく、自治体AXを進めるための情報基盤づくりとして提案しました。

ペーパーレス化は「紙をなくすこと」が目的ではない

ペーパーレス化を進める際に注意したいのは、「紙を使わないこと」自体が目的になってしまうことです。

もちろん、印刷や保管にかかる負担を減らすことは大切です。
しかし、紙資料をPDFにしただけでは、業務改善につながらない場合があります。

たとえば、スキャンした資料が共有フォルダの中に無秩序に保存されていたり、ファイル名の付け方が部署ごとに違っていたりすると、必要な資料を探す手間は残ってしまいます。

また、最新版がどれかわからない、誰が更新したのかわからない、過去の資料が再利用しにくいといった課題も起こりやすくなります。

そのため、JAICではペーパーレス化を「紙を減らす取り組み」としてではなく、「情報を探しやすく、使いやすく、引き継ぎやすい状態に整える取り組み」として位置づけました。

自治体業務における情報管理の課題

自治体の中には、日々の業務に関わる多くの情報があります。

会議資料、申請書類、通知文、マニュアル、契約関係資料、過去の判断資料、住民対応事例、引き継ぎ資料など、情報の種類は多岐にわたります。

これらが紙、個人フォルダ、共有フォルダ、メール、チャットなどに分散していると、次のような課題が生じやすくなります。

  • 必要な資料を探すのに時間がかかる
  • どれが最新版かわかりにくい
  • 同じような資料が複数存在する
  • 担当者が異動すると情報の所在がわからなくなる
  • 過去の判断や事例を活用しにくい
  • 引き継ぎに時間がかかる
  • 業務が属人化しやすい

こうした課題は、単に作業効率の問題にとどまりません。

情報を探す時間が増えれば、住民対応や政策検討に使える時間が減ってしまいます。
また、担当者ごとに情報の持ち方が違う状態では、組織として知識や経験を蓄積しにくくなります。

ペーパーレス化は、このような情報管理の課題を見直すきっかけになります。

まず取り組むべきは、共有フォルダと保存ルールの整理

JAICでは、ペーパーレス化の第一歩として、庁内共有フォルダの整理を提案しました。

共有フォルダは、多くの自治体で日常的に使われている身近な情報基盤です。
しかし、フォルダ構成やファイル名のルールが統一されていない場合、資料が蓄積されるほど探しにくくなります。

そこで、まずは次のような点を整理することが重要です。

  • どの部署がどの情報を管理しているか
  • どの資料を共有フォルダで管理するか
  • フォルダ階層をどのように設計するか
  • ファイル名をどのルールで統一するか
  • 最新版と過去版をどう区別するか
  • 保存期間や廃棄ルールをどう扱うか
  • 個人情報を含む資料の閲覧権限をどう設定するか

ペーパーレス化は、便利なツールを入れる前に、こうした基本的なルールを整えることが欠かせません。

小さなルールであっても、全庁的に共有されていれば、職員が迷わず資料を探せるようになります。

紙資料のデータ化は、優先順位をつけて進める

紙資料をすべて一度に電子化しようとすると、現場の負担が大きくなります。

また、電子化しても利用頻度が低い資料ばかりであれば、効果を実感しにくくなります。

JAICでは、業務上の効果が大きい資料から優先的にデータ化することを提案しました。

たとえば、次のような資料は優先度が高いと考えられます。

  • 業務マニュアル
  • 申請書・様式
  • 契約書・仕様書
  • 会議資料
  • 通知文
  • 住民対応事例
  • よく使う引き継ぎ資料

これらは、日常業務で参照される機会が多く、整理されていれば業務効率の向上につながりやすい資料です。

一方で、保存だけが目的の古い資料や、利用頻度が低い資料については、すぐに電子化するのではなく、保存期間や廃棄ルールとあわせて検討することが現実的です。

ペーパーレス化では、「何でもデータ化する」のではなく、「業務で活かせる情報から整える」という考え方が重要です。

AI活用の前提となる情報基盤をつくる

生成AIやデジタルツールを自治体業務に活用するためには、AIが参照できる情報が整理されている必要があります。

庁内情報が紙資料のままだったり、PDF化されていても保存場所や分類が不明確だったりすると、AIを導入しても十分に活用できません。

たとえば、将来的には次のような活用が考えられます。

  • 業務マニュアルの検索
  • 過去事例の参照
  • 会議資料の要約
  • 通知文や説明文の作成支援
  • 職員向けFAQの整備
  • 引き継ぎ資料の整理
  • 住民対応時の参考資料検索

これらを実現するためには、まず庁内情報が一定のルールに基づいて整理されていることが前提になります。

つまり、ペーパーレス化はAI活用の準備段階でもあります。

JAICでは、紙を減らすだけでなく、AIやデジタルツールが活用しやすい形で情報を整えることを重視しています。

セキュリティと利便性のバランスを取る

自治体が扱う情報には、個人情報、人事情報、契約情報、住民対応に関わる情報など、慎重に管理すべきものが含まれます。

そのため、ペーパーレス化を進める際には、すべての資料を単純に共有すればよいわけではありません。

情報の種類に応じて、閲覧できる人、保存場所、更新権限、持ち出しルールなどを整理する必要があります。

一方で、情報管理を厳しくしすぎると、必要な資料にアクセスしにくくなり、業務効率が下がる可能性もあります。

大切なのは、セキュリティと利便性のバランスを取ることです。

JAICでは、次のような観点から運用ルールを整えることを提案しました。

  • 個人情報を含む資料の保存場所
  • アクセス権限の設定
  • 共有してよい情報と制限すべき情報の分類
  • 最新版の管理方法
  • 一時保存フォルダの扱い
  • 廃棄・保存ルール
  • AIに参照させる情報と参照させない情報の区別

このようなルールを先に整えることで、安心して情報を活用できる環境をつくることができます。

モデル業務から小さく始める

ペーパーレス化は、いきなり全庁的に進めようとすると、現場の負担が大きくなります。

そのため、JAICでは、まずモデル業務を選定し、小さく試す進め方を提案しました。

たとえば、会議資料、申請書・様式、契約関係資料、業務マニュアルなど、効果が見えやすい分野から始める方法です。

モデル業務で試すことで、次のような点を確認できます。

  • フォルダ構成が使いやすいか
  • ファイル名ルールが現場に合っているか
  • 資料を探す時間が減ったか
  • 更新ルールが守りやすいか
  • 職員の負担が増えていないか
  • セキュリティ上の課題がないか

小さく試し、現場の声を反映しながら改善することで、無理のない形で全庁展開につなげることができます。

ペーパーレス化は自治体AXの第一歩

ペーパーレス化は、単なる事務作業の見直しではありません。

庁内にある情報を整理し、共有し、再利用できる状態にすることで、業務の属人化を防ぎ、引き継ぎや新人教育をしやすくし、将来的なAI活用にもつなげることができます。

JAICでは、ペーパーレス化を自治体AXの第一歩として位置づけています。

紙を減らすことだけを目的にするのではなく、情報を組織の資産として活かす。
その視点を持つことで、ペーパーレス化はより実務的で意味のある取り組みになります。

まとめ

JAICでは、地方自治体に向けて、ペーパーレス化と庁内情報整理に関する提案を行いました。

ペーパーレス化の目的は、単に紙を減らすことではありません。

庁内にある情報を整理し、必要な人が必要なときに確認できる状態をつくること。
そして、共有・再利用しやすい情報基盤を整え、将来的なAI活用や自治体AXにつなげていくことが重要です。

JAICでは今後も、地方自治体の実務に即した形で、業務改善、情報管理、AI活用、AX推進に関する提案を行ってまいります。